多汗症(手の汗)治療は山本クリニック 本文へジャンプ


誤った理解

1. 両側手術と片側手術の違いについて
  現在、一般的な医療において片側手術と両側手術の二つの治療の進め方が行なわれています。

両側手術では、代償性発汗の程度を把握することが出来ません。
いきなり予想以上の代償性発汗が感じられ、「そんなはずではなかった。」と後悔する場合があります

片側手術であれば同じ切除設定でも代償性発汗は両側手術より少なく半分程度ですみます。
(初回片側ETSでは代償性発汗どの程度か自身で評価することができます。
反対側の手術を受ければ、初回手術と同じ程度の代償性発汗が追加され、
結果として代償性発汗は増加します。
初回、代償性発汗が感じられない場合は良いのですが、
片側で多少でもある場合には両側手術ではダブルになるということです。)
ETSで最も慎重に行動しなければならない点が代償性発汗であり、患者自身の理解・認識そのものです。
ひいては術後の満足度に関係する重要な部分です。



2. 片側手術で手術を進めると両側手術とくらべて医療費が高くなり二倍になるか?
 現在初回両側ETSを行なっている医師の中に、片側手術では治療費が二倍かかると
言う人もいます。
治療費は両側受けた場合に麻酔に要する費用がかさむので
当院においての費用計算においても初回片側手術が
両側手術の二倍におよぶものではありません。


初回両側ETSを行なっている医師は片側手術の経過を知らない事が原因しています。
多汗症を治すのに必ず片側づつ二回手術をしなければ治らないと勘違いしています。
まず片側手術を受ければ反対側の多汗症が自然に落ち着いてくることが約20%に見られます。
この場合には反対側のETSを行なう理由(多汗の病態そのもの)が解決します。
この理由で初回両側ETSを行なう理由はありません。


のこり80%では反対側の多汗の著名な改善はしませんが、
片側の手の汗が減ることでドライになったほうの手で
治療を受けていない手の汗を拭くことができ日常生活が快適になります。
代償性発汗などの程度を十分体験・観察して反対側の治療の適否を判断することが重要です。

ETSの副作用に手の過度の乾燥(ドライハンド)というのがあります。
両側手術では手の汗が全くに停止し、汗が出ないことで日常生活に支障来たすことがあります。
片側手術では理論上片側の手の汗は残るのでドライハンドの副作用は問題となりません



3下方のETSでは代償性発汗が少ないから両側ETSが出来るといった誤った考え方
.ETSの切除設定で代償性発汗の発生率が減少することは1990年代において
小生らがいち早く学会報告し2000年以降の世界的な下方遮断が行なわれる流れを作りました。

しかしながら、たとえ下方遮断でT4単独の切除であってもT3の切除であっても代償性発汗は生じます。
ただ全体から見た場合の激しい代償性発汗の発生頻度が下方遮断は少なくなるということはいえます。

一方、下方遮断では手の汗を減少させる作用は少なくなり、効果が感じられなくなる欠点があります。
当院でもT4切除を1990年代に行ない調査しました。
G2あるいはGrade 3の軽症でない多汗症の場合には術後2年以降の効果がほとんどでなく非力です。
Grade 1の軽症でも2年から3年経過すると汗が再燃してきます。
結果的にT3の切除を追加する必要が生じます。
再燃してきた場合に同じ手術を行なっても多汗の改善がなく、
再発ではなくT4のみでは明らかな切除量の不足ということが分かります。
現在当院ではT3の処置は原則的に行なっております。
軽症の一部の患者と術中の電気刺激試験で判断しております。

再燃しても再手術の不同意の患者さまもおられます。
その理由は代償性発汗です。
下方遮断でも代償性発汗出るときは出るということを知っていなければなりません。
客観的にはT2・3で見受けられるものより
T4の代償性発汗のほうが程度は軽いという印象はあるものの
当の患者様が耐えられないとしている以上、激しい代償性発汗となりえるということです。
手術の満足度に影響する代償性発汗は医師がその程度を判断することが困難といえます。
このため1998年から段階的に1999年以降全例に対し初回治療は片側ETSに変更しました。
小生が当時勤務していた神戸大学附属病院においても軌道修正しております。

要するに、T4切除で代償性発汗が少ないから両側手術でよいということにはなりません。

患者様が両側の希望があったとしても両側の手術の必要性がそもそもあるのかということを含め、
手術適応を判断するのが医師の責任であり、手術を控える責任も医師にはあります。
代償性発汗の発生頻度が減少したとしても代償性発汗が解決したのではありません。
頻度が少なくなっても、激しい代償性発汗が発生する場合があります。

両側手術を受けるのであれば、代償性発汗に対して安直に考えてはいけないということです。
手術を受ける場合には、患者さまも治療効果と代償性発汗・ドライハンドについて
十分な理解を進めることが重要です。

T3を処置しない下方切除を薦められることがあっても
両側手術ではなく片側手術で受けることを推奨します。



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2008年4月11日 掲載開始