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手術の個別設定

 当院は、代償性発汗の治療に成功した経験(LSFG技術)を生かし、
副作用である代償性発汗の対策方法を盛り込み
手術治療を行っています。


 手術・麻酔事故(出血・肺損傷・術後気胸など)は一切なく、安全な日帰り手術を行っております。 
 術中の電気刺激検査の豊富な経験から手の汗のみならず脇の多汗の治療成績を約50%(一般的)から80%(当院にまで向上)手の多汗と脇の多汗の治療を一度で望む人に適します。

 他施設でETSを受け脇の多汗が悪化した患者さまであっても当院で脇の多汗の改善できる場合があります。


ホルネル症(合併症)を回避

 術中レントゲンの撮影により交感神経の切除レベルを確認することで切除部位の誤認識を回避しております。
 これまでの全例において第一肋骨の切除をしてホルネル症はありません。

代償性発汗に対する治療

 ETSにおける最大の副作用が代償性発汗です。ETSを行っている治療施設は多くありますが、代償性発汗の発生メカニズムあるいは病像について知識が乏しいためです。
 小生は、一般にリバーサル手術(代償性発汗の治療)を神戸大学病院の教官時代より臨床の現場でその治療方法の解決に取り組んで参りました。

 現在は当院において代償性発汗の治療(LSFG技術)を行っております。2005年以降は他施設における代償性発汗の治療(自由診療)を開始し、治療の成功を得ております。

 小生もさまざまな切除設定で行いましたが、
初回手術で代償性発汗リスクをなくすることは不可能という認識でおります。

 しかしながら、いったん代償性発汗になった場合には、どうすれば改善が得られるかの判断はできるようになりました。

汗の出方と身体的観察と手術部位から判断して、これまでの経験に基づき対策が出せるようになりました。

 術後厳しい代償性発汗になった場合に、代償性発汗に取り組む知識・経験・能力があるのかどうか治療施設の選択の際には重要です。




無瘢痕(Scar−less)手術
 
脇の下に2.5ミリの皮膚切開
(下段に詳述追加)

日帰り手術
 手術の当日入院でその日の退院が全例に可能

当院の手術の進め方

  
ETSについてもここ数年で変化がみられています。
2000年以前では第二肋骨と交差する交感神経節の遮断が多く行われていましたが、
この部分の遮断が反射性発汗をもたらすことが判明し
有色人種では第三肋骨以下での交感神経節の処置へと手術の手法が変化しました。
 当院では、代償性発汗の軽減を目指して術後3・6・12・24か月の
経過のデータを蓄積し適切な遮断レベルの分析検討しております。


初回手術は片側(ETS)治療


  また、多汗症は通常両側の手のひらが同じ程度の多汗がありますが、手術治療ではまず
片側のみを治療し経過をみることが重要です。
当院の切除設定では、
右のETSを受けると、受けた側の右手のひらの汗も、前腕・上腕の汗はぴったり止まります。
 左の手のひらの発汗がすごく多くても、右手の手や腕で拭くことができるようになります。
ハンカチや手ぬぐいなどを持たなくても大丈夫になります。
握手も通常右手で行いますから、日常生活の多くの場面で多汗症の問題はなくなります。
 多汗症治療では、片側の
ETSののち6ヶ月くらい経過すると反対側の手の発汗も減少してくることが、
2割にみられることが明らかになっております。
このように、術後
1年経過観察を行えば、
反対側の手術を受けないでも治まってしまうので、
反対側の手術そのものが不要となる場合が約2割あります。


代償性発汗

  
初回手術では代償性発汗(反射性発汗)が予想外に多い場合もありえるため、当院では平成
11年以降初回片側で手術をしております。
手術を受けて
、1年位の経過観察と自己評価を十分に行ってから、
残りの反対側の手術を受けることが重要です。
 初回に両側同時に手術した場合には、術後に想定外の沢山な汗が
背中などに出た場合に対処が困難となります。
両側同時にETSを受ける場合は、片側づつ両側受けるのとは異なって
代償性発汗のリスクは大きくなります。
安直に両側の手術をしている医療機関もありますが、
代償性発汗を甘く見てはなりません。

初回両側ETSをうけた患者さんのなかで、
治療を後悔する方がいるのが現実です。
他人から見ては大して多い量でないとしても、
患者さま自身がその代償性発汗を大変つらく感じることもあります。
汗の量でだけでなくて、汗の出るタイミングや部位なども関係してくるため、
患者様自身がどのように感じられるのかも人それぞれです。

このような理由から、ETSを受ける方々は先人の反省点をよく踏まえて、
初回ETSは片側で経過を見ることが適切です。
 初回片側でETSを受ければ、自分自身にETSが相応しい治療
であったのかどうか、自然と明らかになります。
代償性発汗が強く出た場合には、
両側を最初に受けたことを非常に後悔するだけです。

 当院では、担当した患者様すべてに不適切がないように
片側ETSを受け術後ひと夏あるいは半年の経過をみてから、
反対側の手術を受けていただいております。

当院では、ETSの術中に行う電気刺激試験の結果と切除箇所および
術後の代償性発汗の出方から
代償性発汗と関係する交感神経節の所在を明らかにする努力を行ってきました。

交感神経節の切除は個別に設定し、切除設定の最適化に取り組んできました。
ある場所の交感神経節(T2・T3・T4・T5のどれかが代償性発汗の可能性を有している)
が電気刺激試験の結果、切除にふさわしくないと判断できる場合があります。
この交感神経の切除を控えるなど、患者ごとの設定を行っております。
現在、当院が代償性発汗の手術治療で成果をだせるようになったのも
前述の取り組みが実を結んだからです。
 
 しかしながら、当院の経験数をもってしても、
初回手術では代償性発汗をなくすことは出来ておりません。
したがって、ETSの初回治療は片側で受け、患者様自身が
代償性発汗の評価を行っていただくように治療計画をたてております。
代償性発汗は初回片側で受ける場合と初回両側でうける場合には格段に厳しさが異なります。
初回治療では、片側ETSで代償性発汗の程度などに認識を深めることが重要です。


 T3あるいはT4であれば代償性発汗は「少ない」とか「最小である」などの表現を他病院のホームページで見受けますが、誤りです。
交感神経幹の切除量と切除部位の両方が代償性発汗に大きく影響します。
切除箇所がT3のみであるとかT4のみで安心というものではありません。
厳しい代償性発汗が生じることがあります。
複数段の交感神経幹の切断(遮断)を一律的に行うと、
代償性発汗を引き起こす可能性が高くなりますが、
T4だけで防げるものではありません。
勘違いしているだけです。

 当院の過去の資料ではではT2に関係するものが約30%
T3・T4・T5では約5%という結果でした。
T2でも約70%の人は厳しい代償性発汗にはなりません。
一方、T3・T4・T5でも5%に厳しい代償性発汗があります。
また、T2を行なわなければ発汗が止まらない多汗症の患者さまも存在します。
T4やT5では多汗症の治療として汗の止まりが不十分になります。
逆に顔面・頭部が多汗になることさえあります。
当院では現在切除設定はその患者さまの発汗の程度やその他の状態観察の上、個別に行っています。

初回片側手術であればその患者様の経過から、
二回目の反対側のETSでは切除箇所の見直しが出来ます。
 すなわち、最初のETSの際の術後経過と電気刺激試験の結果から代償性発汗を引き起こす可能性がT4にあると想定された場合に
二回目のETSではT4をしないという対応ができます。


切除量の多いことが代償性発汗の原因と考えている医師はT4のみあるいはT3のみなど一箇所のレベルで交感神経を切断する傾向があります。
切断する部分を減らしただけでは代償性発汗は減少しません。
さらに、この場合の問題点は長期的な再発が高まってくることです。
まず切除箇所が少なくなることにより、
多汗症の治療に必要な交感神経の切除さえ出来ていないこともあります。

一方、複数のレベルのETSでは再発率は抑えられます。
(当然のことですが、単独レベルでは3%であった場合に
2箇所切除すれば3/100×3/100となり一万分の 9 となり約0.1%となります)。

切除部位の決定は治療にとって重要であり、個別化・最適化が求められます。

ETSの長期経過を重要視したうえで、

最初のETSでは

代償性発汗の程度と治療効果を判定し、

二回目の手術において

最終的な治療設定(両側を含めて)を

行うという方針を当院では推奨しております。

(Staged operation: 段階的手術)




 当院では、脇の下に
2.5ミリの皮膚切開を加え、直径2ミリの内視鏡とスコープガイドと呼ばれる手術器具を用いてETSを行ないます。
平均的な手術時間は約
40分で、麻酔時間は50分程度で終わります。
現在まで、
2020年9月までに13000例以上に日帰り手術を予定し、12例を除いて全例が手術当日の退院が行なえております。
前述の副作用のホルネル症候群はありません。
退院後は、日常生活が可能でシャワー浴は術翌日から可能で、通常の入浴は術後
3日目から行なえます。
退院後は内服で抗生剤等を用いますが、術後の通院は通常不要です。


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2006年10月11日 21:37:11 掲載開始



   

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